2020年、コロナ禍による影響で私はすべての事業を撤退せざるを得ない状況に陥りました。京都の観光地に店舗を構えていたため、繁忙期の土日でも売上はゼロ。状況は厳しく、会社の存続が危ぶまれる中、事業の立て直しに奔走しました。
そんな中、私は京都の和菓子の木型からインスピレーションを得て、バスボムづくりから再出発することにしました。事業をたたむ際に一部の事業を売却し引き継いでくださった社長が、バスボムで有名な会社を辞めた方をご紹介くださったのです。コロナがなければ、この出会いもなかったでしょう。その方と一緒にバスボムづくりが始まりました。当初はバスボムの形や崩れをなくす事ばかりに手を取られていましたが、ある程度形ができてくると、一番の特徴である香りをどうするかと、アロマを並べて試行錯誤していました。そんな中、あまりに行き詰った頃に、あるご縁で調香師さんうぇおご紹介いただく事になりました。
調香師さんと一緒に様々な香りを作っていく中で、香りづくりの奥深さと、驚くほどの楽しさに魅了されました。プロからアドバイスをもらえば、誰でも自分だけの香りを作ることができる。そのような体験は時間を忘れるほど楽しく、もっと多くの人に届けるべきだと強く感じたのです。
バスボムづくりは順調に進み、機械も購入して製造を開始しました。いよいよ店頭に並べて販売を開始できるところまで来ていたのですが、私はそれ以上にこの香りづくりの世界に引き込まれていきました。
そのころ、コロナで手術が延期になっていた鼻中隔湾曲症の手術を受けました。重度だったため、左鼻がずっとつまっていたのです。手術後、世の中が驚くほど豊かな香りに包まれていることに気づきました。この体験が、私を香りの世界へと導いたのかもしれません。
ただ単に香りを選ぶのではなく、自分自身で香りを創る体験。それは私が調香師さんと一緒に経験した、かけがえのない時間でした。だからこそ、お客様にも同じような体験をしていただきたい。ネットでアンケートに答えるだけで香りを作るのではなく、直接お客様と向き合い、一緒に香りを創り上げる。そんな「体験」をお届けすることが、私の使命だと気づいたのです。当時は悩みに悩んだ選択でしたが、今思えばあの時の素直な気持ちは正しかったと確信しています。
「香りを選ぶからつくるへ」というビジョンは、そのような思いから生まれました。香りづくりは、高尚な趣味でも、調香師や香水に精通した人だけのものでもありません。料理に高級レストランの料理から家庭料理まであるように、香りにもハイブランドから自分で作る香りまで、様々な形があっていい。そんな気軽で自由な香りの世界を、私は目指しています。
長年にわたり、お客さまは有名ブランドが生み出す香りを通じて自分らしさを表現してきました。それらの香りは、ブランドのアイデンティティを体現し、限られた選択肢の中から私たち自身を表現する手段となっていました。しかし、フレグランスプロジェクトは一歩進んで、一人ひとりが自分だけのアイデンティティを香りに込めることができる世界を目指します。無限の可能性の中から、あなたらしさを最も純粋な形で表現するオリジナルフレグランスを創り出します。
まずは「オーダーメイドフレグランス」という新しい価値観を世の中に広め、その中で多くのお客様に愛されるブランドになりたい。前の会社から3人のメンバーが残ってくれ、その信頼できるバックアップがあったからこそ今があります。そして、いまでもご協力いただいている調香師さんの応援がなによりも自信につながりました。
コロナ禍で厳しい時期を乗り越え、同時に手術と調香師さんとの出会いが重なったのは、運命だったのかもしれません。コロナで手術の日程が年単位でずれたからこそ、新しい一歩を踏み出すことができ、全てがつながりました。コロナがなかったら、今の私はなかった。
困難を乗り越え、新しい世界を切り拓いていく。フレグランスプロジェクトの挑戦は、まだ始まったばかりです。今ではたくさんの一緒に頑張ってくれる仲間、応援してくれている方がいます。そして、支持してくれるお客さまがいます。その期待に応えられるよう、世の中を変えていきたいと思います。
私たちは、ブランドの香りとオリジナルの香りが共存し、互いに価値を高め合う世界を目指しています。「私らしさは、私の感性でつくる」という信念のもと、私たちはお客様と共に、より豊かでパーソナライズされた香りの体験を創造していきます。
一緒に、お客様だけの香りを見つけ、世界に新しい風を吹き込みましょう。共に夢を追いかけてくれる仲間を、心から求めています。